『なぜあなたはカフェ・グランハ・ラ・エスペランサを選んだのですか?』
複数の世界チャンピオンたちへの質問に、興味深い共通点がありました。
『品質と革新性において、これ以上の選択肢を見つけられなかった』と。
彼らを魅了する『カフェ・グランハ・ラ・エスペランサ』とは、一体何者なのでしょう
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサという現象
コーヒー競技会の世界で、ある農園の名前が際立って頻繁に登場します。
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサです。
2023年ワールド・ブリューワーズ・カップ(World Brewers Cup)でチリ代表のカルロス・メディーナ(Carlos Medina)が優勝した際、彼が使用したのはカフェ・グランハ・ラ・エスペランサのナチュラル・シドラ(Natural Sidra)でした。
2019年と2020年のワールド・ブリューワーズ・カップ(World Brewers Cup)では、デンマーク代表がセロ・アスル(Cerro Azul)のゲイシャ(Gesha)で挑戦。
各国の国内大会でも、カフェ・グランハ・ラ・エスペランサのコーヒーが数多くの優勝に貢献しています。
なぜ、世界中に優れたコーヒー農園が数多くある中で、トップレベルの競技者たちがカフェ・グランハ・ラ・エスペランサを選ぶことが多いのでしょうか。
『100点満点のコーヒー』への執念
『コロンビアの土壌は100点満点のコーヒーを生産できる』
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサの創業家3代目、リゴベルト・エレーラ(Rigoberto Herrera)とルイス・エレーラ(Luis Herrera)兄弟は断言します。
これは単なる理想論ではありません。
彼らは本気で、文字通り『完璧なコーヒー』を作ろうとしているのです。
その証拠が、2012年のSCAA(アメリカスペシャルティコーヒー協会)で起きた前代未聞の出来事です。
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは、コーヒー・オブ・ザ・イヤー(Coffee of the Year)で第2位、第3位、第7位を同時受賞。
さらに同じ大会でブリューワーズ・カップ(Brewers Cup)優勝、バリスタ・チャンピオンシップ(Barista Championship)優勝、ロースターズ・チョイス・アワード(Roasters Choice Awards)受賞という、史上初の『トリプルクラウン』を達成しました。
一つの農園が、一つの大会で、ここまでの栄誉を独占することは極めて稀です。
業界関係者たちは『CGLEの品質は別次元』と評価しました。
門外不出の精製技術、X.O&Napoleon
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサ(CGLE)が他と決定的に違うのは、独自開発した精製方法にあります。
X.O(エクストラ・オールド)プロセス
2018年、カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは世界を驚かせました。
コニャック業界の用語を借りて名付けられた『X.O』は、まさに『コーヒーのコニャック』を作り出す技術です。
- ブリックス(Brix)糖度18.0の統一選別
通常の農園では15-25度の幅で収穫するが、CGLEは18.0度に完全統一。これにより発酵の均一性を極限まで高める - 真空密封グレインプロバッグでの48-50時間発酵
一般的な嫌気性発酵は密閉タンクで行うが、CGLEは真空密封バッグを使用し、より精密な酸素遮断を実現 - 10時間ごとの温度測定と25-28℃維持
通常の処理では1日1-2回の確認だが、CGLEは10時間ごとに測定し、厳格な温度管理を実施 - 発酵後のサイロ乾燥と太陽乾燥の組み合わせ
3-4日間のサイロ乾燥後、15日間の太陽乾燥という独自の二段階乾燥
この技術を使用したコーヒーについて、2018年ワールドバリスタチャンピオンシップ(World Barista Championship)準優勝者のレックス・ツェン(Rex Tseng)は『従来のコーヒーとは異なる、新しい味覚体験』と評価しました。
Napoleon(ナポレオン)プロセス
さらに革新的なのがナポレオン(Napoleon)です。
168時間(7日間)という長時間の嫌気性発酵に加え、以前のゲイシャ発酵から抽出した『マスト』(果汁エッセンス)を5-10%添加します。
- 168時間の超長時間発酵
一般的な嫌気性発酵は48-72時間だが、ナポレオンは7日間という前例のない長時間発酵 - ゲイシャ・マスト(must)の添加
以前のセロ・アスル農園ゲイシャの発酵液を5-10%添加。ワイン醸造技術を応用した世界初の試み - 20-23℃の低温管理
発酵タンクを屋根下に設置し、半分を水で囲むことで温度を維持。一般的な25-30℃より低温で発酵 - CO2圧力の精密制御
密閉タンク内のCO2による圧力上昇を利用し、リリースバルブで余分な圧力と酸素を排出 - 機械乾燥での仕上げ
発酵後、38-40℃で3日間の機械乾燥。一般的な太陽乾燥とは異なる精密な温度管理
この工程により、ラム酒、赤い果実、ジャスミン、そしてコニャックのような風味が生まれます。
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは、これらの精製方法の詳細を完全には公開していません。
世界中のコーヒー生産者が模倣を試みていますが、同じ結果を再現できた者はいません。
🍇ブランデーと逆?
X.Oは2018年にCGLEによって導入された新しい処理方法(48時間の発酵)、ナポレオンは『新しい嫌気性ナチュラルプロセス』として紹介されており、発酵時間が166時間または168時間です。
ブランデーでは、ナポレオンよりX.Oのほうが熟成は長いですが、コーヒー処理ではナポレオンのほうが念入りです。
5つの農園、5つの宝石
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは、5つの農園を所有しています。
4つはバジェ・デル・カウカ(Valle del Cauca)地域に、1つはクンディナマルカ(Cundinamarca)県にあります。
それぞれが、まるで異なる宝石のような個性を持っています。
セロ・アスル(Cerro Azul)- 青い山の奇跡
標高1,700~2,000メートル、トルヒーヨ(Trujillo)に位置する『青い山』と呼ばれるこの農園は、ゲイシャ(Gesha)種専門の聖地です。
リゴベルトがラ・エスペランサ農園から見た山が、霧に包まれて青白く見えたことから命名されました。
太平洋から吹き付ける温かくミネラル豊富な海風と、15-21℃という昼夜の激しい温度差が、ゲイシャに信じられないほどの複雑性をもたらします。
17.4ヘクタールの栽培面積に33,879本のゲイシャが植えられ、朝夕の霧と午後の強い赤道直下の太陽という独特の環境が、世界チャンピオンたちが最も欲しがるゲイシャを生み出します。
2つの山に挟まれた高台という立地が、風向きによって異なる微気候を作り出し、チェリーの糖度を最適レベルまで高めています。
ラ・カブラ(La Cabra)のバリスタたちが世界大会で使用するゲイシャの多くがここから生まれています。
ラス・マルガリータス(Las Margaritas)- 品種の実験場
標高1,570~1,850メートル、カイセドニア(Caicedonia)に位置する『品種の庭園』と呼ばれるこの農園は、CGLEの革新の中心地です。
33.8ヘクタールに94,367本の多様な品種が植えられ、13の区画で実験的栽培が行われています。
マンデラ(Mandela)、サンファン(San Juan)、モッカ(Mokka)、ラウリーナ(Laurina)、パカマラ(Pacamara)など、ここで開発・改良された品種は業界に革命をもたらしました。
年間降水量1,340mm、湿度73%という安定した環境で、新品種の交配と選抜が継続的に行われています。
収穫労働者の子供たちのための学校も併設され、コーヒー農業の専門教育を通じて次世代の育成も行っています。
スーダンルメ(Sudan Rume)の自然処理もここで行われ、ジンジャーとレモングラスの独特なアロマを持つコーヒーを生産しています。
ラ・エスペランサ(La Esperanza)- 希望の農園
標高1,430~1,760メートル、トルヒーヨに位置する農園グループの名前の由来となった場所です。
34.3ヘクタールに96,600本が植えられ、11の区画で管理されています。
1990年代後半から有機栽培の先駆けとして革新的な農法を実践し、2002年には完全有機農園として認証を取得しました。
ラウリーナ(Laurina)、コロンビア(Colombia)、ゲイシャ(Gesha)、イエローブルボン(Yellow Bourbon)、カトゥーラ(Caturra)、マンデラ(Mandela)など多様な品種を栽培。
20-23℃の温度範囲と年間1,526mmの降水量という恵まれた環境で、5名の常勤スタッフが収穫作業と季節労働者のトレーニングを担当しています。
持続可能な農業システムの構築地として、多くの若手農学者の研修拠点にもなっています。
ポトシ(Potosí)- すべての始まり
1945年創業の地であり、CGLEの歴史が始まった場所です。
カイセドニアに位置し、52ヘクタールに188,725本が植えられています。
2006年から2016年まで有機認証農園として運営された後、現在は品質向上に特化。
2017年の火災で施設が全焼しましたが、エレーラ兄弟はこれを機に生産施設を再設計し、「3つのドラゴン」と呼ばれる機械乾燥機を導入しました。
2018年には2つの区画をゲイシャとシドラ(Sidra)の新品種に改植。
サンファン(San Juan)、コロンビア(Colombia)、カスティージョ(Castillo)、マンデラ(Mandela)も栽培し、X.OやNapoleonプロセスの最新技術実験場として、CGLEの革新的精製方法の開発拠点となっています。
自然光プロセス(Natural Light)では15時間の温度管理発酵後、72時間の除湿乾燥を行う独自技術も開発されました。
ハワイ(Hawaii)- モッカの楽園
クンディナマルカ(Cundinamarca)県ササイマ(Sasaima)にある唯一の農園で、希少なモッカ(Mokka)種の専門農園です。
モッカ種の種子はハワイ島のカアナパリ・コーヒー・ファームズ(Ka’anapali Coffee Farms)から2010年頃に持ち込まれ、その感謝を込めて農園を『ハワイ』と命名しました。
通常2メートルに成長するモッカを、接ぎ木技術により1.2メートルの中型樹に改良し、収穫効率を大幅に向上させました。
栽培が非常に困難な品種ですが、2019年には過去最高の収穫を記録。
小さなクリスマスツリーのような形状の木から、通常より小粒で凝縮された風味を持つ豆が収穫されます。
メープルシロップ、アーモンド、カカオのような独特の風味プロファイルを持ち、ユリ・チパテクア(Yuri Chipatecua)が品質推進者として、この希少品種の栽培技術向上に取り組んでいます。
ゲイシャ革命 – パナマからコロンビアへ
2007年、リゴベルト・エレーラはパナマで農園を借り、翌年ベスト・オブ・パナマ(Best of Panama)で優勝を果たしました。
しかし彼は、その栄光に満足しませんでした。
『なぜパナマでしかゲイシャは育たないのか?』という疑問を抱いた彼は、ゲイシャの種をコロンビアに持ち帰る決断をしました。
多くの専門家が『困難だ』と予想しました。
ゲイシャはパナマの特殊な環境に適応した品種と考えられていたからです。
しかしカフェ・グランハ・ラ・エスペランサは、コロンビアの土壌と気候を徹底的に研究し、ついにコロンビア産ゲイシャの栽培に成功しました。
現在、カフェ・グランハ・ラ・エスペランサのゲイシャは、その品質の高さで世界的に認められています。
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサ社会的貢献
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサの真の強さは、コーヒーの品質だけでなく、それを支える人々への深い配慮にあります。
世界最高品質のコーヒーを生産するためには、世界最高の労働環境が必要だという信念のもと、様々な取り組みを実践しています。
次世代の育成
ラス・マルガリータス農園には、収穫労働者の子供たちが通う学校があり、通常の教科に加えて、コーヒー農業について学ぶ専門クラスを設けています。
これは単なる福利厚生ではありません。
農村部での労働力不足により賃金が上昇しているにもかかわらず、都市部への移住傾向は続き、収穫労働者の平均年齢が上昇している中で、若い世代にコーヒー産業への興味を早期から育てる戦略的な取り組みです。
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサはラス・マルガリータス農園に教育施設と体育施設(バスケットボールコート)を設置し、収穫労働者の子供たちだけでなく、地域コミュニティ全体のためのイベントも開催しています。
労働者のための環境整備
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは、労働者の尊厳と安全を最優先に考えています。
- ラス・マルガリータス、セロ・アスル、ラ・エスペランサ農園には収穫期用の労働者宿泊施設があり、すべて男女別の宿舎に分かれており、その数は均等です
- ラ・エスペランサ農園には5名の常勤スタッフがおり、収穫作業と季節労働者が収穫を始める前のトレーニングの両方を担当しています
- 収穫労働者には通常賃金より25%高い報酬を支払っています
若手専門家の育成拠点
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは多くの若手農学者の家として機能し、夢が育まれ、持続可能な農業システムが構築される場所となっています。
例えば、ハワイ農園の品質推進者であるユリ・チパテクア(Yuri Chipatecua)は、カフェ・グランハ・ラ・エスペランサで自身の方向性に沿って学び、成長している良い例です。
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは彼女の教育継続を支援し、現在彼女は希少なモッカ種の栽培技術向上プロジェクトにおいて重要な責任を担っています。
コミュニティプログラム(Community Program)
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは、自社農園だけでなく地域全体の発展にも貢献しています。
『コミュニティプログラム(Community Program)』は、近隣農家がカフェ・グランハの栽培基準と監督の下でコーヒーを栽培する協力プログラムです。
- 農家が平均より25%高い報酬を得られます
- 家族と農園をより良く支援することを目的としています
- 地域コーヒーに参加する生産者には1キログラムあたり0.31米ドルの追加プレミアムが支払われます
持続可能性への包括的アプローチ
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは、水使用量の削減に加えて、保全地域の設定と従業員への配慮を通じて、生態学的・社会的バランスの維持に取り組んでいます。
- 全農地の20%を自然保護区として確保し、50種以上の鳥類と動物を保護しています
- 5つの農園と12のコーヒーコミュニティを運営し、地域全体の品質向上に貢献
- 有機栽培への転換(1990年代後半から)と有機堆肥施設の運営
1945年の設立以来、カフェ・グランハ・ラ・エスペランサは持続可能なコーヒーコミュニティの創造に向けて成長し、その地位を確立してきました。
彼らのアプローチは、最高品質のコーヒーは、それを生産する人々の幸福と尊厳なくしては達成できないという哲学を体現しています。
頂点に立ちながら、なお高みへ
カフェ・グランハ・ラ・エスペランサの強さは、科学的アプローチと執念の融合にあります。
農園内の品質研究所では、常駐するQグレーダー(Q Grader)チームがすべてのロットを検証し、スコア84点以下のコーヒーは市場に出しません。
『私たちは毎朝4時に起きて農園を歩く。すべての木、すべての実を見る。コーヒーと対話する。これを70年以上続けている。』とリゴベルトは語ります。
2019年、スーダンルメ(Sudan Rume)ナチュラルが『世界のトップ3コーヒー』に選出されました。
しかし、エレーラ兄弟は満足していません。
『まだ100点には届いていない。でも必ず到達する。それがカフェ・グランハ・ラ・エスペランサの使命だから。』
『カフェ・グランハ・ラ・エスペランサのコーヒーを使うということは、100年の歴史、3世代の情熱、そして革新への飽くなき挑戦を、一杯のカップに注ぐということだ。』
2023年ワールド・ブリューワーズ・カップ(World Brewers Cup)優勝者のカルロス・メディーナ(Carlos Medina)はこう語りました。
コーヒー業界の頂点に立ちながら、なお高みを目指すカフェ・グランハ・ラ・エスペランサ。
その姿勢こそが、世界チャンピオンたちを惹きつけてやまない理由です。