コーヒーグラインダーはバリスタツールの中で最も重要と位置づけて間違いありません。
そしてグラインダー刃と性能こそ、味わいに大きく差をつけます。
コニカル(円錐形)と平行円盤(フラット)という根本的に異なる設計思想が、まったく異なる味わいのコーヒーを作り出すのです。

この記事はグラインダーの心臓部『刃』に特化しています。
価格別おすすめは『コーヒーグラインダーとは?』をご覧ください。

コーヒーグラインダーとは?

コニカル刃(円錐刃)の特性と最適な用途

構造と動作原理

コニカルバーは、円錐形の内側刃が、リング状の外側刃の中に収まる構造です。
豆は重力に従って垂直に落下しながら粉砕され、刃の間隔が徐々に狭くなることで段階的に細かくなります。
回転速度は通常300-500RPMと低速で、発熱を最小限に抑えます。

この構造により、粉砕時の遠心力への依存が少なく、重力を活用できるため、エネルギー効率が高く、静音性に優れています。
早朝や深夜の使用を考慮する家庭用として理想的です。

味わいの特徴

コニカルバーは『バイモーダル分布』を生成しやすく、これが独特の味わいを生み出します。
特にミルクベースのドリンクでは、この厚みのあるボディが牛乳と良く馴染み、カプチーノやラテに最適です。

ボディ感 微粉の存在により、厚みのある口当たり
甘さ 中煎り~深煎りでチョコレートやカラメルのニュアンスを強調
複雑性 複数の粒度が混在することで、味の層が重なる
持続性 後味が長く続き、余韻を楽しめる

メンテナンスと寿命

コニカルバーの交換目安は750-1000kgの豆を処理後。
家庭用なら年間50kg程度の使用で15-20年は持続します。
残留(リテンション)も少なく、通常0.5-1g程度。
シングルオリジンの切り替え時にも風味の混在を最小限に抑えられます。

清掃は月1回程度、付属のブラシで刃の溝を掃除し、年2回程度グラインダークリーナー(Grindzなど)を使用すれば、新品同様の性能を維持できます。

フラット刃(平刃)の特性と革新

精密な平行性が生む均一性

フラット刃は2枚の平行な円盤状の刃で構成され、中心から外側に向かって豆を粉砕します。
刃の平行性(パラレリズム)が粒度の均一性を決定づけ、0.01mm単位の精度が要求されます。

回転速度は1400-1800RPMと高速で、遠心力により豆を外側に送り出します。
この高速回転により、短時間で大量の豆を処理できますが、発熱管理が課題となります。
最新モデルでは冷却システムや低速モーターの採用により、この問題を解決しています。

『クラリティ』という新しい価値観

フラット刃最大の特徴は『ユニモーダル分布』による味の明瞭さ(クラリティ)です。
浅煎りのスペシャルティコーヒーで『パイナップル、グレープフルーツ、マンゴー』といった具体的なフレーバーノートを表現したい場合、フラット刃は最適です。

酸味の表現 フルーツ系の酸味を明確に分離
フレーバーの分離 複数の風味を個別に認識可能
クリーンさ 雑味のない澄んだ味わい
軽やかさ すっきりとした後味

サイズによる性能の違い

54mm:家庭用エントリー、毎秒1-2gの処理能力
64mm:プロシューマー向け、毎秒2-3gの処理能力、SSPなどのカスタムバー対応
75mm:セミコマーシャル、毎秒3-4gの処理能力、発熱管理優秀
83mm:ハイエンド、毎秒4-5gの処理能力、究極のユニフォミティ
98mm:業務用最高峰、毎秒5-6gの処理能力

大径化により刃の周速が上がり、より効率的な粉砕が可能になります。
また、発熱も分散されるため、連続使用時の品質安定性が向上します。

第3の選択肢 ハイブリッド刃の特殊形状

ゴーストティースが生む球状粒子

ゴーストティース(ゴーストバー)は平刃の亜種で、垂直方向に大きく突出した三角形の歯を持ちます。
バン(Bunn)、グラインドマスター(Grindmaster)、ディッティング(Ditting)などの業務用グラインダーで数十年前から使用されてきた実績ある技術です。

垂直に突出した歯の独特な構造により、豆を『切る』のではなく『砕く』動作となります。
この独特な切削メカニズムにより、通常の平刃やコニカル刃と比較してファインズ(微粉)が少ない均一な粒度を実現します。
フレンチプレスやコールドブリューで透明感のあるカップを楽しめます。

コーヒーグラインダーCafeSing ORCA|鹿児島コーヒー addCoffee

最近では家庭用手動グラインダーにも採用が広がり、チタンコーティングとの組み合わせで耐久性と性能を両立させた製品も登場。
フィルターコーヒー愛好家にとって、新たな選択肢として注目を集めています。

Timemoreターボバーの3層構造

タイムモア(Timemore)が2023年に開発したターボバーは、ゴーストバーと従来の平刃の特徴を融合させた革新的な設計です。
標準的な平刃とゴーストバーの両方から最良の側面を組み合わせたハイブリッド平刃で、3層の歯構造を持っています。

コーヒーグラインダー Timemore Turbo Burr|鹿児島コーヒー addCoffee

この独自の幾何学的設計により、以下の特性を実現しました。

● 球状に近い均一な粒子形成
● ファインズの大幅な削減
● 中間域での高い均一性
● 明るく複雑な風味プロファイル

コーヒーグラインダー Timemore-Sculptor078|鹿児島コーヒー addCoffee

タイムモア・スカルプター078(Timemore Sculptor 078)は78mmという珍しいサイズの刃を採用しています。
この中間的なサイズにより、より長い切削経路を確保し、熱の発生を抑制しながら均一な粒度を実現しています。

参考:Timemore.com

🏆 500万ドル集めた実力

2023年、タイムモア(Timemore)はキックスターター(Kickstarter、世界最大のクラウドファンディングサイト)でスカルプター(Sculptor)シリーズを発表し、約500万ドル(約8億円)を調達しました。
これはコーヒー関連製品として過去最高額の記録で、コーヒー業界で大きな話題となりました。

グラインダー刃のPVDコーティング

PVDコーティング(Physical Vapor Deposition / 物理蒸着)とは、真空中で固体材料を蒸発・イオン化させ、対象物の表面に薄膜を形成する表面処理技術です。
PVDコーティングにより、著しく寿命を延ばし、安定し一貫した挽き目を長期間維持します。

TiN

最も一般的なのが『チタンナイトライド(Titanium Nitride / TiN)』コーティングです。
硬度2000HV程度で優れた耐摩耗性・耐熱性を持ち、切削工具や金型、装飾品に幅広く使用されています。

金色の外観が特徴で、優れた耐摩耗性を提供します。

電動コーヒーグラインダー - PVDバーコーティング Tin|鹿児島コーヒー addCoffee

TiAlCN

チタン・アルミ・カーボン・ナイトライド(Titanium Aluminum Carbon Nitride / TiAlCN)は、チタン、アルミニウム、炭素、窒素の複合体です。
高硬度と優れた耐摩耗性を持ち、2~3倍の寿命を実現します。
工具や金型、コーヒーグラインダー刃など、長期耐久性が求められる用途で使用されています。

SSP社は、TiAlCNを『レッドスピードコーティング(Red Speed Coating)』として、独自コーティングで商品化しています。
SSP社の公表では、4,000~5,000kgのコーヒー豆を挽くことができるとされ、コーティングなしの刃(約600~1,000kg)と比較して、寿命が4~8倍以上に延びています。

電動コーヒーグラインダー - PVDバーコーティング SSPア社レッドスピードコーティング|鹿児島コーヒー addCoffee

DLC

『ダイヤモンド・ライク・カーボン(Diamond-Like Carbon / DLC)』コーティングは、炭素の結合構造により、ダイヤモンドの硬さとグラファイトの滑りを両立。
微細加工や非鉄金属に適しています 。硬度は標準的な鋼鉄刃の3倍以上を実現しています。

SSP社は、DLCを『シルバーナイトコーティング(Silver Knight)』という商品名で展開しています。
工業用窒化処理の「SilverNITE」や銀系抗菌コーティングとは別物。

ニュージーランドのゴリラギア(Gorilla Gear)社は、独自のDLCコーティング技術で『ブラックバー』を開発しました。
ゴリラギア社のブラックバーは2,500~3,000HVという硬度を実現しています。

電動コーヒーグラインダー - PVDバーコーティング ゴリラギア社ブラックバー|鹿児島コーヒー addCoffee

コーティング 硬度 倍数
なし(標準鋼鉄) 800HV 0
TiN 1700~3000HV 2.1~3.7倍
TiAlCN 2080~2500HV 2.6~3.1倍
DLC 3000~6000HV 3.7~7.5倍

エスプレッソグラインダーが平刃へシフト

競技会が変えたエスプレッソの常識

かつて『エスプレッソ=コニカル刃』は揺るぎない常識でした。
しかし2010年代後半、この図式は大きく崩れ始めます。

ワールド・バリスタ・チャンピオンシップ(World Barista Championship / WBC)で革命が起きました。
北欧やオーストラリアのバリスタたちが、平刃グラインダーで浅煎り豆を使い、次々と高得点を叩き出したのです。
彼らが追求したのは、従来のエスプレッソとは全く異なる明瞭で繊細な風味プロファイルでした。

巨人Mahlkönigの決断

100年以上の歴史を持つグラインダーメーカー、マールクーニック(Mahlkönig)。
その新型機E65S GBWは、明確に平刃を選択しました。

エスプレッソグラインダーの新時代 Mahlkoenig E65S-GBW|鹿児島コーヒー addCoffee

Mahlkönigは公式ブログで興味深い見解を示しています。
『バイモーダルな粒度分布は、エスプレッソ抽出において同時に過抽出と未抽出を引き起こす。これが本格的なエスプレッソ事業がコニカル刃設計から大きく離れた理由だ』

平刃がもたらす利点は明確です。
予測可能な抽出時間、チャネリングの劇的な減少、そして圧倒的な風味の明瞭性。
専門店が求める再現性と品質を、平刃は確実に実現します。

当店(addCoffee)でも、中煎り用と浅煎り用でE65S GBWを2台導入しています。
実際に使用して実感するのは、65mm平刃の優れた熱管理性能です。
連続挽きでも豆の風味を損ないません。
さらにGBW(Grind-by-Weight)の高精度計量と平刃の均一な粒度が完璧にマッチし、0.1g単位でのサラサラ安定したドーシングに魅了されます。

つまり、『エスプレッソ=コニカル刃』という常識は、もはや過去の遺物になりつつあるのです。

参考:Mahlkönig USA – Flat vs Conical Burrs

刃専門メーカーSSP社の挑戦

韓国の刃専門メーカー、サンシム・プレシジョン(Sung Sim Precision / SSP)社は、コーヒーグラインダー用の交換刃を製造している会社です。
同社は刃の形状設計と表面処理技術の両方で革新をもたらしています。

参考:SSP grinding solution

Lab Sweet 鋳造技術

SSP社の代表的な製品が『ラボスイート(Lab Sweet)』シリーズです。
この名前は、高級グラインダーDitting 807 Lab Sweetの刃形状を参考にしたことに由来します。
● 特徴:Ditting Lab Sweetの64mm版、鋳造製法による独特の刃形状
● 粒度分布:400-800ミクロンでガウス分布

Ditting 807 Lab Sweetは『甘みを引き出す刃』として業界で有名でした。
SSP社はこの設計思想を取り入れ、より多くのグラインダーで使えるようにしたのです。

コーヒーグラインダーSSPキャストLabSweetV3|鹿児島コーヒー addCoffee

Lab Sweet刃の最大の特徴は、鋳造製法で作られていることです。
通常の刃は鋼材を機械で削って作りますが、Lab Sweet刃は溶かした金属を型に流し込んで作ります。
この製法により、刃の表面に独特の粗さが生まれ、コーヒー豆を砕いたときに丸みを帯びた均一な粒子ができます。
その結果、抽出液に適度な粘性が生まれ、甘みとボディ感のバランスが良いコーヒーになります。

Lab Sweet刃は3つのサイズが展開されています。
64mmはDF64やFellow Ode用、83mmはNiche DuoやDF83用、98mmはMahlkönig EK43用です。
また、同じLab Sweetでも世代があり、V2(第2世代)はフィルターコーヒー専用、V3(第3世代)はエスプレッソとフィルター両方に対応しています。

SSP社のラインナップ

マルチパーパス(MP)刃

万能型(エスプレッソ50%、ドリップ50%)のマルチパーパス(Multi Purpose)
● 特徴:フラット面の追加により、エスプレッソ抽出を容易化
● 粒度分布:極めて狭いユニモーダル、標準偏差60ミクロン以下

電動コーヒーグラインダー - SSP Multi Purpose|鹿児島コーヒー addCoffee

極めて少ないファインズで高い明瞭性を実現します。
V1は仕上げ平面なしでジューシーな後味、V2は平面追加でエスプレッソにも対応。
浅煎りのフルーティーな風味を最大限に引き出しますが、ボディは薄めです。
酸味が強調されやすく、抽出歩留まり20%以上も可能。
フィルター・エスプレッソ両用の汎用性が特徴です。

ハイユニフォーミティ(HU)刃

エスプレッソ特化のハイユニフォーミティ(High Uniformity)
● 特徴:制御されたバイモーダル分布により、ボディと明瞭さのバランス
● 粒度分布:200-400ミクロンに70%集中、微粉15%、粗粒15%

電動コーヒーグラインダー - SSP High Uniformity|鹿児島コーヒー addCoffee

名前と異なり、制御された幅広い粒度分布でフルボディのエスプレッソを生成します。
標準刃より優れた風味分離を持ちながら、高いボディとマウスフィールを維持。中煎り・深煎りの伝統的エスプレッソに最適で、明瞭性と厚みのバランスが良好です。
初心者にも扱いやすいエスプレッソ専用設計となっています。

ウルトラロウファインズ(ULF)

究極のクラリティを追求したウルトラロウファインズ(Ultra Low Fines)
● 特徴:微粉を5%以下に抑制、ターボショット向け
● 粒度分布:300-500ミクロンに90%集中

電動コーヒーグラインダー - SSP Ultra Low Fines|鹿児島コーヒー addCoffee

マールクーニックKenia刃に着想を得たフィルター専用設計です。
プレブレーカーと仕上げ平面がなく、極めて均一な単峰性分布を実現。
MPより甘く長い後味が特徴で、日常的な飲用に適しています。
ノコギリ状の仕上げ歯により、MPより若干良い風味分離を持ちます。
一部機種ではエスプレッソも可能です。

刃のサイズと特性

サイズによる特性変化

平刃

平刃の場合、48mm刃は38mm刃と比較して約60%研削面積が増加します。
この増加した研削面により、より多くの切削刃が豆と接触できます。
38mm刃は毎秒1~1.5gの研削速度、64mm刃は同じ時間で2~3gを処理します。
大口径刃は低いRPMで同等の線速度を実現できるため、発熱を抑えながら研削可能なのです。

コニカル刃

コニカル刃では円錐形の構造により、48mmコニカル刃の研削経路は38mm刃より30-40%長くなります。
この延長された経路により、豆はより長い距離を螺旋状に移動しながら研削され、段階的に細かくなっていきます。

⚙️ 線速度とは

コーヒーグラインダーの刃(バリ)が回るとき、刃の『外側』がどれくらいの速さで動いているかを表すのが『線速度』です。
刃のサイズ大小では、外側の速度を同じとした場合、内側のスピードはサイズの小さいほうが速く回さなければならず、発熱の原因となりコーヒー豆にストレスがかかるのです。

⚙️アライメントとは

コーヒーグラインダーの刃アライメント(alignment)とは、刃同士の位置関係を正確に揃えることです。
特に平刃では、左右の刃が完全に平行で、均等な距離で向かい合っていることが重要です。
使っていればアライメントが狂ってくるので、定期的な調整が必要です。

平刃のサイズ特性

38-50mm 入門レベル($100-250)

38mm刃は毎秒1-1.5gの研削速度という入門レベルの性能。
50mmまでのサイズでは柔らかめの豆や深煎りには対応できるが、浅煎りの硬い豆ではかなり役不足となります。
この範囲ではほとんど違いを感じない、どんぐりの背比べ程度の変化。
単峰性分布は生成するが、精度と一貫性で上位サイズに明確に劣る。
家庭用エントリーレベルの限界点。

[米国]バラッツァ(Baratza):Vario W+(54mm平刃、2024年)
[中国]ミーコーヒー(MiiCoffee):DF54(54mm平刃、2024年)
[中国]トゥーリン(Turin):DF54(54mm平刃、2024年)
入門レベルのコーヒーグラインダー|鹿児島コーヒー addCoffee

54-64mm 中級レベル($250-1,500)

50mmから55mmではそこまで違いが変わりませんが、50mmから64mmへは大きな違いを感じます。
エスプレッソとフィルター両方で印象的な結果を生み出し、より高価なモデルに関連する明瞭性と複雑性を提供。
64mm刃は毎秒2-3gを処理し、研削速度と粒度均一性が大幅に向上。
多くのプロが64mmを黄金サイズと評価する理由がここにあります。

[ドイツ]プロフィテック(Profitec):Pro T64(64mm平刃、2024年新デザイン)
[イタリア]ユーレカ(Eureka):Atom W65(65mm平刃 GBW、2024年)
[スペイン]コンパック(Compak):Fino(64mm平刃、2024年)
Mazzer Philos|鹿児島コーヒー addCoffee

75-80mm 上級レベル($500-2,500)

64mmから75-80mmへの改善は55から64mmより大きい。
75mm刃は中心の穴がより小さいため、切削面積が実質80mm刃に近い。
商業用としての設計により、18gを5秒で挽く速度を実現。
準商業用から完全な商業用途への架け橋となり、家庭でカフェ品質を求めるユーザーの選択肢。
連続使用でも熱蓄積を最小限に抑える設計です。

[米国]ベントウッド(Bentwood):Vertical 75(75mm平刃垂直、2025年)
[米国]ゼルノ(Zerno):Z2(80mm平刃、2025年予定)
[イタリア]ユーレカ(Eureka):Atom W75(75mm平刃 GBW、2024年)
[イタリア]ユーレカ(Eureka):Zeus One(75mm平刃、2024年プロトタイプ)

83mm 準業務用・小規模カフェ($1,000-3,000)

83mm平刃は64mmより一貫性があり、クランピングが少ない研削を生成。
64mmと比較してより優れた風味分離を実現し、98mmに近い特性を示しながらボディも保持。
大口径による表面積増加は熱分散性向上と研削速度高速化を実現。
カフェでの連続使用に耐える堅牢性と性能を両立。
多くの業務用機の標準サイズ。

[イタリア]フィオレンツァート(Fiorenzato):F83 E Sense(83mm平刃 GBW、2025年)、F83 E Pro Sense(83mm平刃 GBW、2025年)
[イタリア]チャド(Ceado):E37Z(83mm平刃、2024年)、Rev Series(83mm平刃、2025年)
[イタリア]マッツァー(Mazzer):Major V(83mm平刃、2024年版)
[中国]トゥーリン(Turin):DF83V(83mm平刃垂直、2023年)、DF83 Gen 2(83mm平刃、2024年)

98mm 最高峰・本格的な業務用($2,000以上)

業務用グラインダーの最高峰サイズ。
83mmと98mmの違いを味覚で判別することは困難だが、巨大な研削面積により極めて均一な粒度分布と最高レベルの風味明瞭性を実現。
98mm刃のアライメントには10μm未満の公差が必要という極めて高い精度要求。
大量処理能力と最高の粒度均一性を両立し、スペシャルティコーヒーショップの標準装備。

[韓国]ラゴム(Lagom):P100(98mm平刃、継続)、01(98mm/102mm平刃、2025年4月予定)
ワールドバリスタチャンピオンシップ公式グラインダー mahlkonig ek43|鹿児島コーヒー addCoffee

コニカル刃のサイズ特性

38-40mm 入門レベル($100-250)

家庭用コニカル刃の入門サイズ。
バイモーダル分布は生成するが、研削経路が短いため粒度の一貫性は上位サイズに明確に劣る。
重力による豆の供給は可能だが、刃への負荷が集中しやすく発熱の問題も生じやすい。
価格を抑えた設計のため妥協点が多く、特に浅煎り豆では粒度のばらつきが顕著に現れる。

[米国]フェロー(Fellow):Opus(40mmコニカル、2023年)
[米国]バラッツァ(Baratza):Encore ESP(40mmコニカル、2023年)、Encore ESP Pro(40mmコニカル、2025年)
[台湾]ワンゼットプレッソ(1Zpresso):Q Air(38mmコニカル、2024年)
[中国]タイムモア(Timemore):Chestnut C3 ESP Pro(38mmコニカル、2023年)

47-48mm 中級レベル($250-500)

手動グラインダーの実用的サイズ。
48mmコニカル刃の研削経路は38mmより30-40%長く、この延長された経路により精密な粒子の洗練が可能。
64mm平刃と同等の研削ゾーンを実現し、バイモーダル分布の利点を最大化。
人間工学的に優れたバランスで、手動でも苦にならない効率的な研削を実現。

[ドイツ]キヌ(Kinu):M47 Phoenix 2024(47mmコニカル、2024年)、Classic 2024(47mmコニカル、2024年)、Traveler(47mmコニカル、2025年)
[台湾]ワンゼットプレッソ(1Zpresso):X-Ultra(40mmコニカル、2023年)、J-Ultra(48mmコニカル、2023年)、K-Ultra(48mmコニカル、2023年)

63mm 上級レベル($500-1,000)

家庭用における理想的サイズ。
63mm Kony刃は68-71mm刃と同等とされ、バイモーダル分布が生む複雑性とボディを完全に発揮。
58-68mmの範囲ではより速く一貫性のある研削を提供し、熱管理も優れている。
家庭用では十分すぎる性能で、これ以上は投資効果が薄れる境界線。

[イタリア]ユーレカ(Eureka):Mignon Single Dose(65mmコニカル、2023年)
[イタリア]マッツァー(Mazzer):Kony Sg(67mmコニカル GBW、2023年)

65-68mm 準業務用・小規模カフェ($1,000-2,000)

準商業用の本格サイズ。
63mmから明確なステップアップで、プロフェッショナルな要求に完全対応。
68mmコニカルは商業用エスプレッソグラインダーの標準。
低速回転でも圧倒的な研削能力を維持し、連続使用での熱蓄積を効果的に回避。
小規模カフェの主力として最適。

[ドイツ]キヌ(Kinu):M68(68mmコニカル、2025年新デザイン)
[イタリア]フィオレンツァート(Fiorenzato):F71 EK(71mmコニカル、2024年)

71-83mm 最高峰・本格的な業務用($2,000以上)

商業用の究極サイズ。
83mmは市場最大の商業用コニカル刃セットで、400-500rpmの低速設計。
巨大な表面積が可能にする低RPM効率は、熱による風味劣化を完全に防ぐ。
長大な研削経路により、理想的なバイモーダル分布を確実に生成。
プロフェッショナルが求める最高峰の性能。

[米国]ウェーバーワークショップス(Weber Workshops):HG-2 Mk2(83mmコニカル、2024年)、KEY Mk2(83mmコニカル、2024年)

大型化がもたらす性能向上

熱管理とサイズの関係

大きな刃は質量が大きく表面積も広いため、熱を効率的に分散させます。
小さな刃は熱が集中しやすく、摩擦による発熱をより強く受けます。

熱による影響として、揮発性化合物の早期揮発、油分構造の変化、苦味や焦げた風味の発生、アロマの複雑性の低下が報告されています。

クリスチャン・クラット(Christian Klatt、MahlkönigとDittingのプロダクトマネージャー)は、2015年のバリスタキャンプ(Barista Camp)で、RPM(1分間の回転数)を上げることで逆に温度の影響を減らせる可能性を示唆しました。
研削時間の短縮により、総発熱量が減少するためです。

サイズと他の要因の関係

完璧にアライメントされた50mm刃は、調整不良の65mm刃を凌駕することがあるという報告があります。

エスプレッソ用途では最低50mm、高頻度使用では60mm以上が推奨されています。
フィルターコーヒーのみの場合、40-50mmの中型刃で中挽きでの優れた一貫性が得られるとされています。

刃の形状とコーティングが粒度分布に与える影響は、サイズの影響を上回ることもあります。
80mm刃は実際には83mm刃よりも大きな表面積を持つという例もあり、単純な直径比較だけでは性能を判断できません。

コニカル刃特有の考慮事項

コニカル刃の性能は、単純な直径だけでなく、円錐の角度と高さの組み合わせによって決まります。
円錐角度と高さが直径と組み合わさることで研削特性が決定され、大きなコニカル刃は幅広い入口から狭い出口までのより長い研削経路を提供します。

平刃と比較して、コニカル刃は以下の特徴があります:
● 重力を利用した自然な豆の供給
● バイモーダルな粒度分布による複雑な風味
● 低いRPMでの効率的な研削
● 刃への負荷の均等化

大きい刃ほどアライメントが難しくなり、ラジアルプレイ(軸方向の遊び)が性能に与える影響が大きくなるため、製造精度と調整精度がより重要になります。

家庭用途では、多くの人が、大きなコニカル刃(Robur、K10など)の味わいには何も勝るものはないという一般的な合意があるとされていますが、実際の使用では63mm以上での差は微細なものとなることが多いようです。

☕addCoffeeの独り言

たとえ話ですが、かつてのレコード音源は20kHz以上も録音されていました。
CDが製品化されたとき、容量の事情でこの音域は人間には聞こえないとしてカットされたのです。
この音域に入っていたものは、耳で聞こえる音ではなく、臨場感や余韻、つまり心を揺さぶる音でした。

平刃98mmやコニカル刃83mmに『下位ランクと大差ない』など冷ややかな意見もありますが、
『豆の持つ情報を余すことなく』と、プロとして微細なことに大きなこだわりを持つ・・・こういうことだと思います。

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