『コーヒーは1日何杯まで飲んで良いの?』、カフェイン摂取量は誰もが気になる疑問です。
健康に良いと言われるコーヒーですが、飲みすぎれば逆効果になってしまうことも。
また、同じ量を飲んでも、人によって体への影響が異なります。
あなたにとって最適な『適量』はどのくらいなのでしょうか?
世界各国の研究データをもとに、年齢、体重、体質、生活習慣による違いを考慮した『膨大なエビデンスをもとに正しいコーヒーの適量』をお伝えします。
世界の専門機関が定める『安全な』カフェイン摂取量
まず、世界の権威ある機関が推奨するコーヒーの適量を見てみましょう。

アメリカ食品医薬品局(FDA)は、健康な成人の1日のカフェイン摂取量を『400mg以下』と定めています。
これはコーヒーに換算すると約4杯分(1杯150ml、カフェイン約100mg)に相当します。
ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)も同様に、成人の1日のカフェイン摂取量を『400mg以下』と推奨しています。
興味深いことに、世界各国の専門機関がほぼ同じ基準を採用しているのです。
ただし、これは『安全の上限』であり、『推奨量』ではありません。
健康効果を期待するなら、多くの研究で最も効果が認められている『1日3 ~ 4杯』が理想的とされています。
日本では、厚生労働省が明確な基準は示していませんが、妊婦に対しては『1日2杯程度まで』という目安を提示しています。
| 機関 | 推奨上限 | 対象 | 備考 |
| FDA(アメリカ) | 400mg/日 | 健康な成人 | コーヒー約4杯分 |
| EFSA(ヨーロッパ) | 400mg/日 | 健康な成人 | 世界基準とほぼ同一 |
| WHO | 200mg/日 | 妊婦 | コーヒー約2杯分 |
| 厚生労働省(日本) | 明確な基準なし | – | 妊婦は2杯程度まで |
カフェイン400mgってどのくらい?
『カフェイン400mg』と言われても、実際にどのくらいの量なのかピンときませんよね。
身近な飲み物で比較してみましょう。

レギュラーコーヒー(150ml)には約100mgのカフェインが含まれています。
つまり、1日4杯までが目安です。
しかし、コーヒーの種類や淹れ方によってカフェイン量は変わります。
コーヒー種類別カフェイン含有量
エスプレッソは1ショット(30ml)あたり約60mg、アメリカンコーヒーは約80mg、缶コーヒーは約100 ~ 150mg、インスタントコーヒーは約80mgです。
| 飲み物 | 容量 | カフェイン量 | 400mgまでの杯数 |
| レギュラーコーヒー | 150ml | 100mg | 4杯 |
| エスプレッソ | 30ml | 60mg | 6-7ショット |
| アメリカンコーヒー | 150ml | 80mg | 5杯 |
| インスタントコーヒー | 150ml | 80mg | 5杯 |
| 缶コーヒー | 190ml | 100-150mg | 3-4本 |
他の飲み物のカフェイン量
これらも1日の総カフェイン摂取量の計算に入れることを忘れずに。
特に緑茶を日常的に飲む方は、コーヒーとの組み合わせに注意が必要です。
意外なのは、エネルギードリンクです。
1本(250ml)に約80mgのカフェインが含まれているため、コーヒー3杯とエネルギードリンク1本で、すでに上限に近くなってしまいます。
| 飲み物 | 容量 | カフェイン量 | 400mgまでの杯数 |
| 緑茶 | 150ml | 30mg | 13杯 |
| 紅茶 | 150ml | 50mg | 8杯 |
| 烏龍茶 | 150ml | 20mg | 20杯 |
| エネルギードリンク | 250ml | 80mg | 5本 |
| コーラ | 350ml | 35mg | 11缶 |
参考:National Consumer Affairs Center of JAPAN、Nestlé
参考:USDA FoodData Central、USDA National、GoDaddy、Eufic
体重・年齢・性別によるカフェイン適量の違い
実は、コーヒーの適量は『一律4杯』ではありません。
体重、年齢、性別によって変わります。

体重による適量の計算式は『体重1kgあたり5.7mg』が上限とされています。
体重50kgの人なら285mg(約3杯)、70kgの人なら400mg(約4杯)が目安です。
つまり、体重の軽い人ほど適量は少なくなります。
年齢による代謝の違い
年齢による違いも重要です。
高齢者(65歳以上)はカフェインの代謝に若年者より約33%長い時間を要するため、体内にカフェインが残りやすくなります。
研究によると、65~70歳の方は同じ量のコーヒーでも若い頃より効果が長く持続します。
そのため、高齢者には1日50~100mg程度(コーヒー1杯程度)が適量とされており、まずは少量から始めて体調を観察することが推奨されています。
子供や青少年については、カナダ保健省が年齢別の目安を示しています。
4~6歳は45mg、7~9歳は62.5mg、10~12歳は85mgが上限です。
これは大人の約4分の1から3分の1程度の量です。
性別による違い
女性は男性よりもカフェインの代謝が遅い傾向があります。
特に、経口避妊薬を服用している女性は注意が必要です。
研究では、経口避妊薬使用者のカフェイン半減期(血中濃度が半分になる時間)は約10.7時間で、非使用者の6.2時間と比べて約70%も長いことが明らかになっています。
つまり、朝のコーヒーが夕方まで、午後のコーヒーが深夜まで体内に残る可能性があるのです。
月経周期によってもカフェインの感受性が変化することが知られており、月経前の黄体期はカフェインの代謝が遅くなり、効果を強く感じやすくなります。
この時期は普段より少なめにするか、時間帯を調整するとよいでしょう。
参考:EFSA、Canada.ca、UCLA Health、PubMed 01、PubMed 02
妊娠中・授乳中、カフェインの特別な配慮
妊娠中や授乳中の女性は、特に注意が必要です。
- カフェインの母乳への移行:母親摂取量の0.06〜1.5%
- ピーク時間:摂取後1〜2時間
- 新生児のカフェイン半減期:最大120時間(5日間)
- 3-5ヶ月児:約14時間
- 6ヶ月以上:約2.6時間

妊娠中のカフェイン推奨量
米国産科婦人科学会(ACOG)やヨーロッパ食品安全機関(EFSA)など、多くの専門機関は妊娠中のカフェイン摂取量を『1日200mg以下』と推奨しています。
これはコーヒー約2杯分に相当します。
過量のカフェイン摂取は、低出生体重児や早産のリスクを高める可能性があるからです。
実際、妊娠後期にはカフェインの代謝速度が通常の3~4倍遅くなるため、体内に長時間残りやすくなります。
授乳中のカフェイン推奨量
授乳中の推奨量は、地域や機関によって異なります。
ヨーロッパ食品安全機関(EFSA)やオーストラリアの食品基準機関は『1日200mg以下』を、米国疾病予防管理センター(CDC)やカナダ保健省は『1日300mg以下』を推奨しています。
より慎重を期すなら、200mg以下(コーヒー約2杯分)に抑えるのが安全です。
母親が摂取したカフェインは母乳を通して赤ちゃんに移行しますが、その量は母親の摂取量の0.06~1.5%程度です。
ただし、赤ちゃんはカフェインを分解する能力が低いため、睡眠障害や興奮状態を引き起こす可能性があります。
特に新生児は代謝に最長5日間かかることもあるため、生後3ヶ月未満の赤ちゃんを授乳中の方は、より慎重な摂取を心がけましょう。
妊娠前からの準備
妊娠を計画している女性も、妊娠前からカフェイン摂取量を調整しておくことをおすすめします。
急激な変化は体に負担をかけるため、徐々に減らしていくのが理想的です。
参考:ACOG、EFSA、NIH、NCBI Bookshelf
個人差を知る『カフェイン感受性』のチェック法
同じ量のコーヒーを飲んでも、人によって反応は大きく異なります。
これは『カフェイン感受性』の個人差によるものです。
あなたのカフェイン感受性をチェックしてみましょう。
コーヒー1杯を飲んだ後、以下の症状が現れる場合は、カフェイン感受性が高い可能性があります。

軽い症状として、手の軽い震え、心拍数の増加、軽い興奮状態があります。
中程度の症状では、不安感、落ち着きのなさ、頭痛が現れます。
重い症状になると、動悸、吐き気、めまい、不眠が起こります。
これらの症状が現れる場合は、摂取量を減らすか、カフェインレスコーヒーに切り替えることを検討しましょう。
- 高感受性の人:推奨量の半分程度から開始
- 中感受性の人:一般的な推奨量で問題なし
- 低感受性の人:効果を感じにくいが上限は守る
カフェイン感受性は遺伝的要因も大きく、『高感受性』『中感受性』『低感受性』の3つのタイプがあります。
高感受性の人は、一般的な推奨量の半分程度から始めることをおすすめします。
参考:PubMed 01、PubMed 02
参考:Journal of Translational Medicine、Cleveland Clinic、Pfizer
カフェイン代謝の科学的メカニズム
なぜ個人差が生まれるのか、カフェインの代謝メカニズムを解説しましょう。
肝臓での代謝プロセス
カフェインの代謝は、主に肝臓のCYP1A2という酵素によって行われます。
この酵素の活性には大きな個人差があり、遺伝的に決定されています。
活性が高い人は『速代謝型』、低い人は『遅代謝型』と分類されます。

速代謝型の人はカフェインを素早く分解できるため、効果の持続時間が短く、副作用も出にくい傾向があります。
一方、遅代謝型の人はカフェインが長時間体内に残るため、少量でも強い効果を感じ、副作用も出やすくなります。
カフェイン半減期の個人差
カフェインの半減期(血中濃度が半分になる時間)は、速代謝型で約4-6時間、遅代謝型で約8-10時間と大きく異なります。
遅代謝型の人が毎日同じ時間にコーヒーを飲むと、カフェインが体内に蓄積し、予想以上に強い効果が現れることがあります。
個人差が生まれる理由
この代謝の違いは、なぜ『友人と同じ量を飲んでも反応が違う』のか、なぜ『夕方のコーヒーで眠れなくなる人とそうでない人がいる』のかを説明してくれます。
自分がどちらのタイプかを知ることで、より適切なコーヒー摂取量を決めることができるのです。
この科学的理解により、なぜ個人に合わせた摂取量調整が重要なのかが分かります。
一律の基準ではなく、自分の体質に合わせたアプローチが最も効果的なのです。
参考:NCBI Bookshelf、Journal of Translational Medicine、Sleep Foundation、Frontiers
薬との相互作用と注意すべき疾患
カフェインと薬物相互作用について
カフェインは一部の薬剤と相互作用する可能性があります。

血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)
研究によると、カフェインがワルファリンなどの抗凝固薬の代謝を阻害し、血漿濃度を高めて抗凝固作用を増強する可能性があります。
定期的にカフェインを摂取している場合、医師が適切な薬の用量を調整します。
抗精神病薬・抗うつ薬
カフェインは一部の抗精神病薬や抗うつ薬の血中濃度を上昇させる可能性があります。
これにより副作用のリスクが高まることがあるため、服用中の方は医師に相談しましょう。
その他の薬剤
カフェインは薬の吸収を変化させたり、代謝酵素の競合を起こすことで、様々な薬剤と相互作用します。
定期的に薬を服用している方は、カフェイン摂取量について医療専門家に確認することをおすすめします。
疾患によるカフェイン制限
● 不整脈:心拍数増加のリスク
● 高血圧:血圧上昇の可能性
● 胃潰瘍:胃酸分泌促進による悪化
● 不安障害:症状の増悪
● 不眠症:睡眠の質の低下
特に注意が必要なのは、パニック障害の患者さんです。
研究では、パニック障害患者237名を対象とした調査で、カフェイン摂取後51.1%がパニック発作を経験しましたが、プラセボでは0%でした。
カフェインがパニック発作の引き金になることがあるため、完全に避けるか、非常に少量から始める必要があります。
参考:BioMed Research International、Medical News Today、GoodRx、PubMed
コーヒーのタイミングを時間帯で見る
コーヒーの適量は『いつ飲むか』も重要な要素です。
カフェインの半減期(体内で半分に減る時間)は約5 ~ 6時間です。
つまり、午後2時にコーヒーを飲むと、夜8時でもまだ半分のカフェインが体内に残っています。

理想的な摂取タイミング
質の良い睡眠を確保するには、就寝時刻の6~8時間前以降はコーヒーを控えることが理想的です。
ただし、1杯程度の少量であれば、就寝4時間前でも影響が少ないという研究結果もあります。
夜10時に寝る人なら、午後2~4時以降のコーヒーは控えめにしましょう。
朝のコーヒーも、起床直後ではなく、起床から1 ~ 2時間後がおすすめです。
朝は体が自然に作る覚醒ホルモン『コルチゾール』が多く分泌されているため、この時間にコーヒーを飲むと効果が相殺されてしまいます。
1日の理想的な配分
午前中に2杯、午後早めに1杯という飲み方が、多くの人にとって理想的なパターンです。
これにより、日中の活動をサポートしながら、夜の睡眠に影響を与えません。
| 時間帯 | 推奨杯数 | 理由 | 注意点 |
| 朝(7-9時) | 1-2杯 | 自然な覚醒をサポート | 起床1-2時間後が理想 |
| 午前中(10-12時) | 1杯 | 仕事・勉強の集中力向上 | 昼食前がベスト |
| 午後(13-16時) | 0-1杯 | 昼食後の眠気対策 | 就寝6時間前まで |
| 夕方以降 | 0杯 | 睡眠への影響を避ける | カフェインレスなら可 |
参考:Houston Methodist、Sleep Reviews、Oxford Academic、Cleveland Clinic
カフェイン耐性と『コーヒー断ち』の効果
毎日コーヒーを飲んでいると、だんだん効きにくくなってきます。
これは『カフェイン耐性』と呼ばれる現象で、体がカフェインに慣れてしまうために起こります。
耐性が形成されると、同じ効果を得るためにより多くのコーヒーが必要になります。
しかし、摂取量を増やし続けるのは健康的ではありません。
そこで効果的なのが『コーヒー断ち』です。
2 ~ 3日間コーヒーを完全に控えることで、カフェインに対する感受性が回復し、再び少量で効果を実感できるようになります。
コーヒー断ちの期間中は、頭痛や眠気、イライラなどの離脱症状が現れることがありますが、これは一時的なものです。

- 1日目:軽い頭痛、集中力低下
- 2日目:症状がピークに達する
- 3日目:徐々に改善し始める
- 4日目以降:ほぼ正常に戻る
徐々に量を減らしていけば、症状を和らげることができます。
月に1 ~ 2回、週末を利用してコーヒー断ちを行うことで、長期的にコーヒーの効果を維持できます。
参考:Performance Lab、Avoiding Caffeine Tolerance、NCBI Bookshelf、Healthline
適量を守って楽しむコーヒーライフ
健康的なコーヒーライフを送るためには、適量を知ったうえで、質の良いコーヒーを選ぶことも大切です。
高品質なスペシャルティコーヒーは、カフェインそのままで抗酸化物質は40%も多いということが証明されています。
少量でも満足感を得やすく、結果として摂取量を抑えることができます。
また、カフェインレスコーヒーを上手に活用することで、コーヒーの味を楽しみながらカフェイン摂取量をコントロールできます。
水分補給も忘れずに行いましょう。
コーヒーには利尿作用があるため、コーヒー1杯につき、同量の水を飲むことをおすすめします。
これにより、脱水を防ぎ、カフェインの代謝もスムーズになります。
何より大切なのは、自分の体の声に耳を傾けることです。
数値や基準は参考程度に留め、実際の体調や反応を観察しながら、あなたにとって最適な量を見つけてください。
