日本人の2人に1人ががんと診断される時代、毎日飲むコーヒーに予防効果があるなら知っておきたい情報です。
世界各国で実施された105件の長期追跡調査を統合した分析により、肝臓がんで54%、子宮内膜がんで27%、口腔がんで31%のリスク低減が確認されています。

がん予防についてがん種別の具体的なデータ、必要な摂取量、そしてなぜコーヒーががんを防ぐのかというメカニズムまで、科学的根拠に基づいて解説します。

この記事は、がん予防に特化しています。
広域情報は『コーヒーの健康効果』がよく分かります。

コーヒーの健康効果

世界各国105件の研究が証明したがん予防効果

2016年に発表された包括的な分析では、世界各国で実施された105件の長期追跡調査が統合され、コーヒー摂取と各種がんの関連が検証されました。
この大規模分析により、複数のがん種で有意なリスク低減が確認されています

世界105件の研究が証明したコーヒーのがん予防効果|鹿児島コーヒー addCoffee

肝臓がんでは54%のリスク低減が最も顕著で、続いて子宮内膜がんで27%、口腔がん・咽頭がんで31%、前立腺がんで11%、メラノーマで11%という結果が得られました。
大腸がんについても13%のリスク低減が認められています。

一方、2023年に発表された包括的レビューでは、コーヒーに含まれる1000種類以上の化合物が複雑に作用してがん予防効果をもたらしている可能性が示されています。
核因子赤血球系2関連因子2(Nrf2)という細胞を守るスイッチのような物質が制御する経路による酸化ストレス(細胞の老化やダメージ)の軽減や、アリール炭化水素受容体(AhR)、核内受容体4A1(NR4A1)などの受容体(細胞の表面や内部で信号を受け取る装置)を介した作用、さらにエピジェネティクス経路(遺伝子のスイッチをオン・オフする仕組み)や腸内細菌叢(腸内に住む細菌の集まり)の変化も関与していると考えられています。

参考:PubMed Centralnature.com

がん種別のコーヒー予防効果

肝臓がん|死亡リスク49%減

コーヒーの肝臓がん予防効果とリスク低減|鹿児島コーヒー addCoffee

肝臓がんは世界で6番目に多く診断されるがんであり、がん関連死亡原因の第3位を占めています。
2020年には90万人の新規症例と83万人の死亡が報告されました。

イギリスの大規模バイオバンク研究では、49万4585人を対象に中央値10.7年の追跡調査を実施した結果、コーヒーを飲む人は慢性肝疾患のリスクが21%、肝臓がんによる死亡リスクが49%低下することが確認されました。

特筆すべき点は、カフェイン入り、デカフェ、インスタント、挽きたてなど、すべてのタイプのコーヒーが保護効果を示したことです。

参考:JIRPubMed

大腸がん|1日1杯で最大17%減

コーヒーの大腸がん予防効果とリスク低減|鹿児島コーヒー addCoffee

大腸がんは日本全体(男女合計)で最も罹患数が多いがんです。
2024年の最新研究では、1日1杯以上のコーヒーを飲む人は、飲まない人と比較して大腸がんのリスクが11~17%低下することが報告されています。

さらに重要なのは、すでに大腸がんと診断された患者への効果です。
ステージ3の大腸がん患者を対象とした前向き研究では、1日4杯以上のコーヒーを摂取していた患者は、コーヒーを飲まない患者と比べて無病生存期間(がんが再発せずに過ごせる期間)が42%改善したという臨床データが得られています。

コーヒーが大腸がんに対して保護的に働くメカニズムとして、Nrf2経路の活性化による酸化ストレスの軽減や、腸内細菌叢(腸内に住む細菌の集まり)の組成変化が関与している可能性が提唱されています。

参考:Wiley Online Library

乳がん|診断後の死亡リスク25%減

コーヒーの乳がん予防効果とリスク低減|鹿児島コーヒー addCoffee

乳がんは日本人女性で罹患数1位のがんです。
乳がんサバイバーを対象とした2021年の研究では、診断後のコーヒー摂取と生存率の関連が調査されました。

中央値約12年の追跡期間中、2501人の総死亡のうち1054人が乳がんによる死亡でした。
1日3杯以上のコーヒーを飲んでいた女性は、コーヒーを飲まない女性と比較して、乳がんによる死亡リスクが25%低く、全死因死亡リスクも同様に低下していることが確認されました。

コーヒーに含まれるカフェインやその他の植物化学物質は、実験室レベルの研究でがん細胞の増殖を制御する効果が確認されています。
また、高インスリン血症(血液中のインスリンが過剰に多い状態)や炎症を抑制することで生存率に影響を与えている可能性があります。

参考:nature.com

前立腺がん|1杯ごとに1.2%減

コーヒーの前立腺がん予防効果とリスク低減|鹿児島コーヒー addCoffee

前立腺がんは日本人男性で罹患数1位のがんです。
16の前向きコホート研究を含むシステマティックレビューとメタ解析では、合計108万1586人のコホートメンバーから5万7732例の前立腺がん症例が分析されました。

コーヒー摂取量が最も多いグループは、最も少ないグループと比較して前立腺がんのリスクが9%低いことが示されました。
さらに、1日1杯のコーヒー摂取量の増加ごとにリスクが1.2%ずつ低下するという線形の関連性も確認されています。

がんの病期別では、限局性前立腺がん(前立腺内に留まっているがん)で7%のリスク低減が認められました。
進行性と致死的前立腺がんについても12%と16%のリスク低減傾向が見られましたが、統計的有意性には至りませんでした。

参考:PubMed Central

頭頸部がん|最大30%減

2025年に発表された国際頭頸部がん疫学コンソーシアムによる解析では、14の症例対照研究から9548例の頭頸部がん症例と15783例の対照者のデータが統合されました。

この大規模プール解析の結果、1日4杯以上のカフェイン入りコーヒーを飲む人は、コーヒーを飲まない人と比較して頭頸部がん全体のリスクが17%、口腔がんのリスクが30%、中咽頭がんのリスクが22%低下することが明らかになりました。

また、1日3~4杯のカフェイン入りコーヒー摂取は下咽頭がんのリスクを41%低減させることが示されています。
デカフェコーヒーについても、1日1杯未満の少量摂取であっても口腔がんのリスクを25~34%低減する効果が認められました。

参考:Wiley Online Library

子宮内膜がん|因果関係を示唆

子宮内膜がんは女性の主要ながんの一つです。
2023年のメンデルランダム化研究では、コーヒーとカフェイン摂取が子宮内膜がんおよびそのサブグループに与える因果関係が評価されました。

メンデルランダム化法は遺伝的変異を用いることで、観察研究では避けられない交絡因子(本当の原因ではないのに関連があるように見えてしまう要因)の影響を最小化できる手法です。
この研究により、コーヒーとカフェイン摂取が子宮内膜がんのリスク低減と因果関係にある可能性が示され、予後との関連も評価されました。

前述の105件の研究を統合した分析では、子宮内膜がんのリスクが27%低減することが確認されています。

参考:Frontiers

メラノーマ|44万人追跡20%リスク減

NIH-AARP食事と健康研究では、44万7357人の非ヒスパニック系白人を対象に、中央値10.5年の追跡調査が実施されました。
432万9044人年の追跡期間中に2904例の悪性黒色腫(メラノーマ、皮膚がんの一種)が確認されています。

1日4杯以上のコーヒーを摂取するグループは、悪性黒色腫のリスクが20%低いことが示されました。
この研究は、それまでの最大規模の前向き研究の約4倍の症例数を持つ大規模コホート研究であり、コーヒー摂取とメラノーマリスク低減の関連性を裏付ける重要なエビデンスとなっています。

参考:PubMed

胃がん|予防効果は確認されず

胃がんは日本全体(男女合計)で3番目に罹患数が多いがんですが、コーヒーの予防効果については他のがん種とは異なる結果が示されています。

2015年に発表された13の前向きコホート研究を含むメタ解析(137万人、3368例)では、コーヒー摂取と胃がんリスクの間に全体として有意な関連は認められませんでした。
1日3杯の増加ごとのリスクも1.03と、予防効果は確認されていません。

注目すべきは地域差です。
米国の研究では、コーヒー摂取量が最も多いグループで胃がんリスクが36%増加する結果が得られました。
一方、欧州や日本の研究では有意な関連は見られませんでした。

この地域差の理由は謎のままですが、コーヒーの種類(ロブスタ vs アラビカ)、抽出方法、カフェイン含有量の違いが影響している可能性が指摘されています。

参考:BMC Cancer

肺がん|喫煙を考慮すると関連なし

コーヒーの肺がん予防効果とリスク低減|鹿児島コーヒー addCoffee

肺がんは日本全体(男女合計)で2番目に罹患数が多いがんです。
2016年のNIH-AARP大規模コホート研究では、45万7366人を対象に追跡調査が実施され、9000例以上の肺がん症例が確認されました。

年齢と性別のみで調整したモデルでは、1日6杯以上のコーヒーを飲む人は肺がんリスクが4.56倍と大幅に高い結果が得られました。
しかし、これはコーヒー摂取者に喫煙者が多いという交絡因子(本当の原因ではないのに関連があるように見えてしまう要因)によるものでした。

喫煙習慣を適切に調整した後、この関連は大幅に減弱しました。
研究者らは『生涯のたばこ使用に関する調整が不完全であったため、残留交絡がこの結果の説明として考えられる』と結論づけています。
つまり、コーヒー自体が肺がんリスクを上げるのではなく、喫煙という真のリスク因子との関連によって見かけ上のリスク増加が生じていたということです。

参考:PubMed

コーヒーががんを防ぐ3つのメカニズム

Nrf2経路による酸化ストレス軽減

核因子赤血球系2関連因子2(Nrf2)が制御する経路は、酸化ストレス(細胞の老化やダメージ)を標的とし、細胞の防御機構を強化します。
コーヒーに含まれる化合物がこの経路を活性化することで、DNAの損傷や細胞のがん化を引き起こす活性酸素(フリーラジカル、体内で発生する不安定な分子)の活動を抑制します。

コーヒーによる酸化ストレス軽減と細胞防御メカニズム|鹿児島コーヒー addCoffee

一方で、反応性酸素種(活性酸素の一種)を誘導して病的細胞を選択的に死滅させる経路も存在します。
アリール炭化水素受容体(AhR)や核内受容体4A1(NR4A1)などの受容体(細胞の表面や内部で信号を受け取る装置)も関与しており、エピジェネティクス経路(遺伝子のスイッチをオン・オフする仕組み)からの寄与も報告されています。

クロロゲン酸の抗炎症作用

コーヒーに含まれるフェノール性植物化学物質(植物由来の健康成分)の中で、クロロゲン酸は最も豊富な成分です。
2023年の総説では、クロロゲン酸が炎症、各種がん、神経変性疾患に対して化学予防効果を持つことが示されています。

慢性的な炎症は細胞の異常増殖を促し、がん発生リスクを高めることが知られています。
クロロゲン酸は体内の炎症反応を和らげる効果を持ち、特に肝炎や大腸の炎症からがんへの進行を防ぐ可能性があります。

また、インスリン分泌過多やインスリン抵抗性(インスリンが効きにくくなる状態)は細胞の増殖を促進し、大腸がんなどのリスクと関連すると考えられています。
クロロゲン酸は血糖値を改善し、インスリンの働きを正常化することで、がんリスクの低減に貢献する可能性があります。

人体に有益な生物学的効果を持つことから、コーヒーは機能性食品として位置づけられており、がん予防と治療への応用を目指した多くの研究が進められています。

腸内細菌叢の変化が大きく影響

2024年の大規模多オミクス解析では、米国と英国の合計2万2867人の参加者データに加え、211のコホートから5万4198人の公開データが統合されました。

米英7万7千人超の大規模データ統合研究|鹿児島コーヒー addCoffee

この研究により、コーヒー摂取は腸内細菌叢(腸内に住む細菌の集まり)の特定メンバーであるローソニバクター・アサッカロリティカス(Lawsonibacter asaccharolyticus)という細菌の存在量と強く関連していることが明らかになりました。
この関連性は異なる集団間で高い再現性を示し、予測精度(AUC)は0.89に達しました。

in vitro実験(試験管内での実験)では、コーヒーがL. asaccharolyticusの増殖を刺激することが確認されています。
腸内細菌叢の組成変化は、コーヒーの化学予防作用や化学療法作用を促進する可能性があり、特に大腸がんに対する保護効果のメカニズムとして注目されています。

参考:PubMed CentralMDPInature.com

科学的根拠に基づくコーヒーとがん予防

世界各国で実施された105件の長期追跡調査を統合した分析により、コーヒーには肝臓がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、頭頸部がん、子宮内膜がん、メラノーマなど、複数のがん種に対する予防効果が確認されています。
特に肝臓がんでは54%、大腸がん患者の再発リスクでは42%という顕著なリスク低減が示されました。

コーヒーががんを防ぐメカニズムとして、Nrf2経路による酸化ストレス軽減、クロロゲン酸の抗炎症作用、腸内細菌叢の変化などが提唱されています。
1000種類以上の化合物が複雑に作用することで、これらの保護効果がもたらされていると考えられています。

ただし、現時点での根拠は観察研究が中心であり、因果関係までは確立されていません。
今後、介入研究やメカニズム解明のための基礎研究のさらなる蓄積が期待されます。

コーヒーのがん予防効果と健康的な毎日|鹿児島コーヒー addCoffee

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