お湯を注ぐだけでサッと飲めるインスタントコーヒー。
実はインスタントコーヒーには、世界恐慌や戦争、そして日本人の発明までも関わる“ドラマ”が詰まっているんです。
この記事では、科学とストーリーを交えて、超やさしくお届けします。
『インスタント』って実はすごい技術だった!
インスタントって、なんとなく“手抜きのコーヒー”みたいに思われがちですが ──
実は、レギュラーコーヒーよりも手間がかかっているって知っていましたか?
まずは、その基本的な作り方から見てみましょう。
【STEP①】“本物のコーヒー”を淹れる
インスタントコーヒーは、豆を細かく砕いた粉ではなく、一度ちゃんと抽出された『液体のコーヒー』から作られます。
つまり、最初の一歩はまさにレギュラーコーヒーそのもの。
そこから、香りや成分をなるべく損なわずに“お湯で溶ける形”に変えていくという、なんとも高度な技術が登場します。
【STEP②】乾燥させ粉にする(2つの方式)
◉ スプレードライ方式(熱風で一気に乾燥)
- コーヒー液を霧状にして、高温の空気に吹き込む
- 落下中に水分が蒸発し、粉だけが下に落ちてくる
- コストが低く、大量生産向き。ただし香りはやや飛びやすい
◉ フリーズドライ方式(氷のまま気化)
- コーヒー液を凍らせ、真空下で氷を直接気体に変化(昇華)させる
- 香りや成分を壊しにくく、風味が豊かに残る
- 高級品やプレミアムラインで使われることが多い
インスタントにするには、コーヒー液を粉にする必要があります。
どちらも、じつは“液体のコーヒーを結晶にする魔法”のような工程なんですね。
【豆知識】
世界初のインスタントは日本人の発明!?
『最初にインスタントを考えたのはだれ?』
実はその答えには、日本人の名前が登場します。
1901年、アメリカ在住の化学者・加藤サトリ(Satori Kato)が世界初のインスタントコーヒーを開発。
紅茶の即席化技術をヒントに生まれたものでしたが、当時はまだ商業化されませんでした。
1930年代、ブラジル政府がネスレに『余ったコーヒー豆を長期保存できる方法を開発してほしい』と依頼。
ネスレはスイスに本社を置く世界最大の食品会社。
これを受けて開発されたのが、1938年に発売された『ネスカフェ』。
ネスカフェ!?皆さん知ってますね♪
【意外な背景】
戦争がインスタントを広めた!?
第二次世界大戦では、アメリカ軍が兵士たちにインスタントコーヒーを支給。
火を使わずに淹れられるという利便性が評価され、帰還兵がそのまま家庭に習慣を持ち帰ったことで、一気に世界に広がったのです。
便利さの裏には、時代の必要と戦場での知恵があったんですね。
【日本での広がり】
ようやく自由に飲めるようになったのは1961年
日本でも、戦後しばらくはコーヒーの輸入規制が続いていました。
本格的にインスタントが広まったのは、1961年の輸入自由化以降。
ネスカフェやキーコーヒーなどが市場に参入し、“お湯を注ぐだけ”の文化が家庭に根づいていったのです。
COFFEE ナビ
『ラク』だからすごい!一杯の奥深さ
インスタントコーヒーには、
- 本物の味を瞬間で届けるための技術
- 世界的な課題を解決したアイデア
- そして、一人の日本人が残した静かな功績
・・・ そんなストーリーがぎっしり詰まっています。
便利で飲みやすいだけじゃない、“粉の奥にある物語”を知れば、次の一杯がちょっと変わるかもしれません。