カフェラテといえばエスプレッソは深煎り。
これが長年の常識です。
しかし、スペシャルティコーヒーの浅煎りで作るカフェラテ。
ミルクと融合しても消えない複雑なフレーバー、焦げた苦味ではなく本質的な旨味と甘み。
本物を知る人だけが辿り着く、カフェラテ最終進化をご紹介しましょう。
スペシャルティ?という方は『スペシャルティコーヒーとは?』をどうぞ。
カフェラテに深煎りが選ばれた理由
1930年代、政治的孤立の中にあったイタリア。
良質なアラビカ種の輸入は困難を極め、入手できるのは北アフリカ産の安価なロブスタ種だけでした。

ロブスタ種は、アラビカ種の半分しか糖分を持たず、ゴム臭やガス臭といった不快な風味があります。
しかしイタリア人は、『貧者の知恵』でこの問題を解決しました。
石炭や薪で動く初期の焙煎機。
長時間かけてゆっくりと焙煎することで、不快な風味を蒸発させ、わずかな糖分を最大限に発達させる。
そして、ちょうどその頃に完成したエスプレッソマシンの高圧抽出が、ロブスタの欠点をポルタフィルターに残し、ボディのあるリキッドだけを抽出することに成功したのです。

こうして生まれた『深煎り=カフェラテ』という常識。
それは、当時の豆の品質における最適解でした。
しかし、あくまで妥協策です。
参考:Why Robusta Coffee Is Making a Comeback | Saveur
浅煎りでしか表現できないカフェラテ
エチオピア産を一口含むと、ベリー系の香りがミルクと溶け合い、ベリーヨーグルトのような味わいに変化します。
コロンビア産なら、チョコレートとナッツの甘みが、ミルクチョコレートの濃厚さを帯びる。
ケニア産は、柑橘系の明るい酸味が、ミルクの甘さに丸く包まれて優しくなる。

シングルオリジン(単一産地、単一品種)。
同じ農園の豆でも、収穫年が違えば味は変わります。
精製方法でも変わり、
ウォッシュドのクリーンで透明感のある味わい、ナチュラルのフルーティーで濃密な甘さ。
深煎りでは、すべてが『焦げた苦味』に統一されます。
どの産地も、どの品種も、同じ味。
しかしスペシャルティコーヒーの浅煎りは違います。
コーヒー豆が本来持つ糖分、アミノ酸、有機酸。
これらの複雑な相互作用がもたらす、多層的な味わい。

そして、ミルクの乳脂肪が、コーヒーの揮発性アロマ化合物を包み込む。
口の中でゆっくりと解放されることで、フレーバーがより長く、より鮮明に感じられるのです。
カフェラテの温度が変えていく味わい
カフェラテが熱いときは、ミルクの甘さが前面に出ます。
冷めるにつれて、コーヒーの複雑さが顔を出してくる。
一口目、二口目、三口目。
温度が下がるにつれて、味わいは変化し続けます。
最後の一滴まで、同じ味はありません。
ローグレードで安定を重視した深煎りには、絶対にない感覚です。
スペシャルティコーヒーのカフェラテ
最高グレードのアラビカ種、欠点豆ゼロの精製、明確なトレーサビリティ。
これらすべてが揃っているのがスペシャルティコーヒーで、浅煎りでも圧倒的な味わいを持つカフェラテが実現します。
ローグレード深煎りカフェラテは、どこでも飲めます。
チェーン店でも、コンビニでも、ほぼ同じ味わいが手に入ります。
浅煎りカフェラテは、それとはまったく異なる次元の一杯。
複雑さ、奥行き、変化 ・・・。

当店(addCoffee)は、指定がなければスペシャルティコーヒー中煎りでお出しします。
鹿児島では浅煎りの理解がまだまだ少数です。
しかし、ご注文時に『浅煎りできますか?』と尋ねる方もいらっしゃいます。
『わかってるなこの人・・・』と心の中でつぶやいています。





